2012年3月11日創刊 石巻日日こども新聞 一般社団法人キッズ・メディア・ステーション

 鈴木さんは農業の他に北上川の葦を使って、茅葺き屋根をつくる仕事をしていた。「東日本大震災がおきたとき、ここに住んでいました」。「ここ」とは、石巻市北上町釜谷崎地区のこと。震災で壊滅し、居住禁止区域になってしまった。しかし、鈴木さんはどうしてもこの場所にこだわった。「ハウスを建ててもよいことになったので

この場所で再開することを決意したんです」。震災の影響で、宮城県のトマトの生産量は半分になった。しかし、宮城県の気候はトマトとパプリカを生産するのに向 いている。ぜひ復活させたいと思った。ハウス栽培で1年中生産すれば、冬は夏の倍の値段で売ることができる。そこで、温度 と日照を管理し計画的に効率よく生産するハウス栽

培に取り組むことにした。

 トマトは、富丸 ムーチョ、リッチリコピン、カナバロの3種類、パプリカは赤、黄 、オレンジの3種類を栽培している。1年間の生産量はトマトが370トン、パプリカは260トンが目標だ。「昨年11月に出荷を開始したばかりですが、順調です。目標以上を目指します」。

 デ・リーフデ北上で生産されている富丸ムーチョとパプリカは、道の駅「上品の郷」や地元のスーパーで買えるが、リッチリコピンはまだ販売されていない。生産量が少ないからだ。リッチリコピンは緑と紫がまじったような色で、赤くない。まるで小さなアボカドのよう。品種によってトマトは赤だけでなく、黄色、紫、緑などもあるそうだ。「リコピン」はトマトにふくまれる栄養素で「リコペン」とも呼ばれ、病気への抵抗

力をつけたり、余分な脂肪を体内に溜めない働きもする。リッチリコピンに含まれるリコピンは、富丸ムーチョの約3倍。リッチリコピンはプチトマトぐらいの大きさだ。一ひとくち口で食べることができるが、皮が厚あつく、種のところが少なめで、プチトマトのように口の中で爆発しないからとても食べやすい。賞味期限は1週間程度。

 ハウスに入るときにはまず自分をきれいにする。くつをはきかえて、マットの上でさらにくつ底を消毒し、小さな部屋に入り、風をあびてホコリや花粉を落とす。そうしてハウスの中に入るとトマトとパプリカのいいにおいが広がっていた。さらに白しろい防ぼ うごふく護服を着てから入るので、普段の服装ではちょっと暑いくらいの温度だ。トマトとパプリカに与えられる肥料や水、二酸化炭素はコンピューターで管理している、

 

 鈴木嘉悦郎さんは昭和22年生まれの69才。石巻市北上町釜谷崎の出身だ。今、「デ・リーフデ北上」でオランダ式の次世代園芸農業に取り組んでいる。釜谷崎地区は東日本大震災で壊滅した地区のひとつだ。

  【取材・文・写真】

 小俣翔太郎

  (大曲小学校6年生)

 小俣渓志郎

  (大曲小学校3年生)

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一般社団法人キッズ・メディア・ステーション

と聞いたので、すごいコンピューター室があるかと思ったら、たった1台のパソコンが置かれているだけ。驚きだ。ハウスを暖かくしているのは「LPガス」。燃料は地元石巻地域の木質チップ。間伐材などが利用される。バイオマスチップが燃えるときに出る二酸化炭素は、トマトとパプリカに与えられる。普通の環境より二酸化炭素が多いので、トマトとパプリカは一生懸命光合成をして成長するそうだ。

 温室で働くのは人だけではない。受粉の仕事をしているのは「マルハナバチ」。働きもののマルハナバチは3カ月ぐらいしか生きられない。トマトとパプリカの上の方に、七夕の短冊のような紙がぶらさがっている。温室の中には小さな虫がいるのでこの紙で虫を取っている。

 デ・リーフデ北上の「リーフデ」はオランダ語で「愛」とい

う意味。鈴木さんの会社のキャッチフレーズだ。「すべてのものに愛があります。日本の農業は経験を積み重ねて覚えていくやりかたですが、このハウスではオランダ式を採用しました。経験の少ない若い人にもできれば、継続しやすくなるでしょう」。「オランダ式」は、過去のデータをコンピューターで管理するため、経験が少なくてもできる方法だ。「このハウスで働く人には若者も多いんです。ぜひ若者たちが将来、農業を続けてくれることを願っています」と鈴木さん。鈴木さんはトマトとパプリカと次世代を愛で育ててくれている。

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